事業計画書サンプル②:ITサービス業

事業計画書サンプル②:ITサービス業
目次

ITサービス業の事業計画書

1. 会社概要

項目内容
商号テックフォワード株式会社 (TechForward Inc.)
設立年月日2025年〇月〇日(予定)
事業所の所在地東京都渋谷区道玄坂〇-〇-〇 (賃貸借契約締結予定)
役員構成代表取締役 △△
資本金700万円
事業年度毎年4月1日から翌年3月31日まで
事業内容中小飲食店に特化したWebサイト制作・運用及び予約システムの開発・提供

2. 申請者(経営者)の経歴

氏名: △△

学歴: 2015年7月 〇〇大学(中国・北京市) 情報工学部 卒業

職歴: 2016年4月~2018年3月 株式会社A(都内SIer)にてシステム開発に従事 2018年4月~2025年3月 株式会社B(Webサービス開発企業)にてWebエンジニアとして在籍 <職務内容>

  • 主にPHP、JavaScriptを用いたWebアプリケーション開発を担当。
  • 2021年より、飲食店向けオンライン予約システムの開発プロジェクトにて、3名のチームを率いるプロジェクトリーダーを務める。
  • 顧客である飲食店オーナーへのヒアリング、要件定義から設計、開発、テストまで一貫して担当し、プロジェクトを成功に導く。同システムは現在、全国約500店舗の飲食店に導入されている。

【本事業との関連性】 エンジニアとして約9年間、Web技術の最前線で開発経験を積んでまいりました。特に直近の4年間は、飲食店業界のIT化という課題に深く関わり、現場のオーナーが抱える「ITに詳しい人材がいない」「高額なシステムは導入できない」「操作が難しくて使いこなせない」といった具体的な悩みを肌で感じてきました。本事業は、この経験で培った専門技術と業界知識を直接活かすものであり、中小飲食店の課題を解決できる、コストパフォーマンスの高いサービスを提供できると確信しております。


3. 事業の目的・理念

日本の「食」は世界に誇る文化ですが、その担い手である中小飲食店の多くは、人手不足やコストの問題から、ITを活用した集客や業務効率化が遅れているのが現状です。

当社の目的は、高い技術力と現場への深い理解に基づき、中小飲食店でも無理なく導入できる「使いやすく、効果の出るITサービス」を提供することです。ITの力で飲食店の魅力を最大限に引き出し、ビジネスの成長を後押しすることで、日本の食文化の発展に貢献します。


4. 事業内容

(1) 提供サービス 中小飲食店に特化した、サブスクリプションモデル(月額課金制)のITサービス「グルテック」を提供します。

  • ① Webサイト制作・運用サービス:
    • スマートフォン表示に完全対応した、モダンなデザインのWebサイトを制作。
    • お客様(店主)自身が簡単にお知らせやメニューを更新できる管理画面(CMS)を提供。
    • サーバー・ドメインの保守管理、セキュリティ対策も月額費用に含みます。
  • ② オンライン予約システム:
    • Webサイトと連動し、24時間365日、予約受付を自動化。
    • 顧客台帳機能や、予約のリマインドメール自動送信機能も搭載。
    • グルメサイト経由の予約に支払う送客手数料を削減し、飲食店の利益率改善に貢献します。

(2) 料金体系 初期費用を抑え、継続的にご利用いただきやすい月額課金制を採用します。

プラン初期費用月額費用主な内容
スタンダード50,000円20,000円Webサイト制作・運用
プレミアム80,000円30,000円Webサイト制作・運用+予約システム

5. 市場分析と自社の強み

(1) 市場環境 国内の飲食店市場において、IT化は大手チェーン主導で進んでいますが、全店舗の約8割を占める中小・個人経営の店舗では、依然として紙の予約台帳や旧式のWebサイトが使われているケースが多く見られます。これらの店舗は、集客や業務効率化に課題を抱えつつも、「コスト」と「IT人材不足」を理由にDX化をためらっており、ここに大きなビジネスチャンスが存在します。

(2) 競合分析

  • 大手グルメサイト: 絶大な集客力を持つが、高額な掲載料や送客手数料が店舗の負担となる。
  • Web制作会社: オリジナルの高機能なサイトを制作できるが、初期費用が数十万〜数百万円と高額。
  • 汎用予約システム: 安価だが、飲食店特有のニーズ(コース予約、席種指定など)に対応しきれない場合がある。

(3) 自社の強み

  1. 圧倒的なコストパフォーマンス: 飲食店に必要な機能に絞って自社開発することで、高品質なサービスを低価格なサブスクリプションで提供可能。
  2. 飲食店特化の専門性: 代表者の開発経験に基づき、飲食店の現場で本当に「使える」機能と、ITに不慣れな方でも直感的に操作できるUI/UX(デザイン)を実現。
  3. ワンストップ・サポート: Webサイトから予約システム、その後の運用まで一気通貫でサポートすることで、お客様はITに関する窓口を一本化でき、安心して本業に集中できます。

6. 販売戦略・人員計画

(1) 販売戦略(マーケティング)

  • Webマーケティング: 飲食店オーナー向けのWebメディアへの広告出稿や、SEO対策を実施。
  • セミナー開催: 飲食店向けの「Web集客セミナー」をオンラインで定期開催し、見込み顧客を獲得。
  • 紹介: 契約いただいたお客様からの紹介キャンペーンを実施。

(2) 人員計画 設立後2年間は、代表取締役の△△が開発・営業・サポートの全てを担当します。契約件数が50件を超え、事業が安定した段階(3年目を想定)で、顧客サポート兼営業担当の従業員1名の採用を計画します。


7. 資金計画

(1) 必要な資金額 自己資金として用意した700万円を、以下の通り事業資金として投じます。

  • 設備資金:200万円
    • 事務所賃借費用(保証金、礼金、仲介手数料等): 120万円
    • 高性能PC、開発用ソフトウェア、テスト用端末等の購入費用: 80万円
  • 運転資金:500万円
    • 当面の運転資金(役員報酬、事務所家賃、広告宣伝費、サーバー代等の8ヶ月分相当)

(2) 資金調達方法 全額、代表者の自己資金により調達します。


8. 収支計画

(1) 売上高の算出根拠 平均契約単価を月額25,000円(スタンダードプランとプレミアムプランの契約比率を1:1と想定)とし、契約件数を積み上げていくモデル。

  • 初年度の目標: 月平均2.5件のペースで新規契約を獲得し、年度末に契約件数30件を目指す。
  • 2年目以降: 既存契約の維持(解約率5%を想定)と、月平均3件の新規契約獲得を目指す。

(2) 収支計画表(初年度・月別) (単位:千円)

項目1-6月 (月平均)7-12月 (月平均)初年度合計
契約件数(期末)15件30件30件
売上高1885634,500
売上原価20 (サーバー代等)40360
売上総利益1685234,140
販管費5105106,120
(内訳)役員報酬3003003,600
(内訳)家賃1501501,800
(内訳)その他6060720
営業利益△34213△1,980

(3) 収支計画表(3カ年) (単位:千円)

項目初年度2年度3年度
売上高4,50012,15022,275
売上総利益4,14011,54221,384
販管費6,1206,42010,020 ※
営業利益△1,9805,12211,364
経常利益△1,9805,12211,364
税引後利益△1,9803,5857,955

※3年度より従業員1名の採用(人件費等で年間360万円増)を想定。



【ポイント解説】このITサービス業の事業計画書が評価される理由

この事業計画書は、貿易業とは異なるITビジネスの特性を踏まえつつ、審査官が重視する**「実現可能性」「継続性・安定性」**を的確にアピールしています。

ポイント1:事業の「実現可能性」を証明する工夫

「本当にこのサービスを開発・販売できるのか?」という審査官の視点に対し、以下の3点が強力な答えとなっています。

①【最重要】申請者の専門技術と事業内容の完全な一致
  • サンプル該当箇所: 2. 申請者(経営者)の経歴
  • ここが評価される!
    • 「Webエンジニアとして9年の経験」「飲食店向け予約システムの開発リーダー」という経歴は、この事業を遂行するための技術力そのものを証明しています。
    • 審査官は「この申請者(△△氏)は、外注に頼らずとも自らサービスを開発できる。事業の核となる部分を完全にコントロールできる」と判断し、事業の実現可能性を非常に高く評価します。まさに「適任者」であることを示せています。
② 明確なターゲット設定と、その課題解決への貢献
  • サンプル該当箇所: 3. 事業の目的, 5. 市場分析
  • ここが評価される!
    • ターゲットを漠然とした「企業」ではなく、「IT化が遅れている中小飲食店」に明確に絞り込んでいます。
    • そのターゲットが抱える「高コスト」「人材不足」という課題を的確に分析し、自社サービスがその課題を解決する手段であることを論理的に説明しています。ニッチな市場で確実に需要があることを示し、事業の着実性をアピールできています。
③ 具体的なサービス内容と、顧客に優しい料金体系
  • サンプル該当箇所: 4. 事業内容
  • ここが評価される!
    • Webサイト制作に加えて「予約システム」まで提供することで、飲食店の業務効率化に踏み込んだ、付加価値の高いサービスであることを示しています。
    • 初期費用を抑えた「サブスクリプションモデル(月額課金制)」は、顧客である中小飲食店が導入しやすく、ビジネスとして成功する確率が高いことを示唆します。

ポイント2:事業の「継続性・安定性」をアピールする工夫

「事業を始めた後、どうやって売上を維持・成長させ、安定した会社経営ができるのか?」という問いに、ITビジネスの強みを活かして答えています。

① サブスクリプションモデルによる「安定収益構造」
  • サンプル該当箇所: 8. 収支計画
  • ここが評価される!
    • この事業計画書の最大の強みです。売上が「月額料金 × 契約件数」で計算されるため、一度契約を獲得すれば、**毎月安定した収益(ストック収入)**が見込めます。
    • これは単発の受注で売上が変動するビジネスに比べ、「継続性・安定性」が非常に高いと評価されます。審査官は、将来の売上予測が立てやすく、経営が安定しやすいビジネスモデルだと判断します。
② 初年度赤字でも、将来性が明確な収支計画
  • サンプル該当箇所: 8. (3) 収支計画表(3カ年)
  • ここが評価される!
    • 初年度は顧客獲得のための先行投資(開発、広告宣伝費)で赤字ですが、これは不自然なことではありません。重要なのは、2年目に黒字転換し、3年目には大きく利益が伸びるという明確な成長ストーリーが描けていることです。
    • 顧客が増えるほど利益が積み上がっていくビジネスモデルの特性が、数字で具体的に示されており、将来性を強く感じさせます。潤沢な自己資金(運転資金500万円)があるため、初年度の赤字を乗り越えて事業を継続できる体力があることも同時に証明できています。
③ IT事業の特性に即した、現実的な経費・人員計画
  • サンプル該当箇所: 6. 人員計画, 8. (2) 収支計画表
  • ここが評価される!
    • 貿易業のような「仕入原価」の比率が低く、代わりに「サーバー代」などが経費として計上されており、ITビジネスへの深い理解を示しています。
    • すぐに従業員を雇うのではなく、「契約件数が50件を超えた段階で」と、事業の成長に合わせた現実的な人員計画を立てており、堅実な経営姿勢が評価されます。
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