貿易業の事業計画書
1. 会社概要
項目 | 内容 |
---|---|
商号 | グローバルブリッジ株式会社 (Global Bridge Inc.) |
設立年月日 | 2025年〇月〇日(予定) |
事業所の所在地 | 東京都豊島区東池袋〇-〇-〇 (賃貸借契約締結予定) |
役員構成 | 代表取締役 △△ |
資本金 | 800万円 |
事業年度 | 毎年4月1日から翌年3月31日まで |
事業内容 | 日本の高品質なベビー用品及び日用雑貨の輸出販売事業 |
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2. 申請者(経営者)の経歴
氏名: △△
学歴: 2016年3月 〇〇大学 経済学部 卒業
職歴: 2016年4月~2024年12月 株式会社△△商事(総合商社)国際貿易部門 在籍 <職務内容>
- アジア(主に中国)向けの機械部品及び化学製品の輸出業務全般に従事。
- 新規サプライヤー(日本のメーカー)の開拓及び関係構築を担当。
- 中国現地の輸入代理店との価格交渉、契約締結、納期管理を担当。
- 5年間で約3億円の取引実績を構築。在職中に築いた日本のメーカー及び中国のバイヤーとの強力なネットワークが、本事業の基盤となります。
【本事業との関連性】 前職の株式会社△△商事で8年以上にわり、日中間の貿易実務の全てのプロセス(サプライヤー開拓、交渉、契約、物流手配、代金回収)を経験してまいりました。特に、日本の高品質な製品を中国市場へ展開するノウハウと、両国のビジネス文化への深い理解、そして具体的な人脈を有しております。この経験とネットワークを最大限に活用し、成長著しい中国のベビー用品市場において、日本の優れた製品を供給することで、事業を必ず成功させられると確信しております。
3. 事業の目的・理念
近年、中国の消費者の間では、品質と安全性に対する意識が著しく高まっており、特に我が子に使うベビー用品においては、信頼性の高い日本製への需要が急増しています。
当社の事業目的は、日本のメーカーが誇る「高品質・安全・安心」なベビー用品を、適正な価格で中国の家庭に届けることです。これにより、中国の子供たちの健やかな成長に貢献すると同時に、日本の優れた製品の価値を世界に広める「架け橋」となることを理念とします。
4. 事業内容
(1) 取扱商品 日本のメーカーが製造する、高品質なベビー用品及び関連する日用雑貨を主力商品とします。
- 主力商品カテゴリ:
- ベビー用スキンケア製品(ローション、クリーム等)
- 哺乳瓶、離乳食用食器
- ベビー用洗剤、清浄綿
- 紙おむつ、おしりふき
- 特徴: 日本国内で評価が高く、安全性に定評のあるブランドに特化して仕入れを行います。
(2) ビジネスモデル(事業フロー) 日本のベビー用品メーカーから商品を仕入れ、中国のECサイト運営企業へ卸販売(輸出)します。
[日本のメーカー] → [当社(グローバルブリッジ株式会社)] → [中国のECサイト運営企業] → [中国の一般消費者]
(3) 仕入計画
- 仕入先: 〇〇製薬株式会社、ピジョン株式会社、株式会社ナチュラルサイエンス等の日本の大手・中堅メーカー。
- 関係性: 前職時代から取引関係のある担当者と既に商談を進めており、当社設立後、速やかに取引を開始できる見込みです。当初は月間100万円程度から仕入れを開始し、売上の拡大に合わせて仕入額を増加させていきます。
(4) 販売計画
- 販売先: 中国で最大級の育児用品専門ECサイト「宝宝網」を運営する、上海宝宝商貿有限公司。
- 関係性: 同社の仕入担当者とは、当社の事業計画について基本合意済みであり、当社からの商品供給を期待されています。将来的には、他の大手ECプラットフォームへも販路を拡大する計画です。
(5) 物流計画 商品の輸送は、国際物流サービスに実績のある「日本通運」または「郵船ロジスティクス」に委託します。輸出に関する通関手続きも同社に依頼し、確実かつ迅速な納品を実現します。
5. 市場分析と自社の強み
(1) 市場環境 中国のベビー用品市場は、年間〇〇兆円規模と推定され、今後も安定した成長が見込まれています。特にEC市場の伸びは著しく、消費者はオンラインで情報を収集し、購入するスタイルが定着しています。富裕層・中間層を中心に「高くても安全で高品質なものを」というニーズが非常に強く、日本製への信頼は絶大です。
(2) 競合分析 同様の対中輸出を行う日系・中国系の商社が競合となります。しかし、多くは多品種を扱う総合商社であり、ベビー用品に特化し、きめ細かいサービスを提供できる企業はまだ少ない状況です。
(3) 自社の強み
- 代表者の専門性と人脈: 8年以上の実務経験と、日中両国のサプライヤー・バイヤーとの強固な信頼関係が最大の強みです。これにより、人気の高い商品を安定的に確保し、有利な条件で販売することが可能です。
- ベビー用品への特化: 商品をベビー用品に特化することで、専門性を高め、顧客(ECサイト)に対して的確な商品提案や情報提供を行うことができます。
- 品質と安全性の保証: 日本国内で正規に流通している商品のみを取り扱い、徹底した品質管理を行うことで、販売先および最終消費者からの信頼を獲得します。
6. 人員計画
設立当初は代表取締役の王偉1名体制で事業運営を行います。事業が軌道に乗り、売上規模が月商300万円を超えた段階で、貿易実務を補助する事務スタッフ1名の採用を計画しています。(2年目以降を想定)
7. 取引予定先リスト
区分 | 企業名 | 所在地 | 備考 |
---|---|---|---|
主要仕入先 | 〇〇製薬株式会社 | 東京都 | 商談済み、取引開始予定 |
主要仕入先 | ピジョン株式会社 | 東京都 | 〃 |
主要販売先 | 上海宝宝商貿有限公司 | 中国・上海市 | 基本合意書締結済み |
物流委託先 | 日本通運株式会社 | 東京都 | 見積取得済み |
8. 資金計画
(1) 必要な資金額 自己資金として用意した800万円を、以下の通り事業資金として投じます。
- 設備資金:150万円
- 事務所賃借費用(保証金、礼金、仲介手数料等): 100万円
- PC、複合機、オフィス家具等の購入費用: 50万円
- 運転資金:650万円
- 当面の運転資金(商品仕入費用、役員報酬、事務所家賃、広告宣伝費、その他経費の6ヶ月分相当)
(2) 資金調達方法 全額、代表者の自己資金により調達します。
9. 収支計画
(1) 売上高の算出根拠 主力商品(スキンケア製品、哺乳瓶等)の平均仕入単価を500円、平均販売単価を800円(粗利率37.5%)と想定。 取扱商品点数と販売数量を段階的に引き上げ、売上を拡大します。
- 初年度(1〜6ヶ月目): 月間2,000個の販売 × 800円 = 月商 160万円
- 初年度(7〜12ヶ月目): 月間2,500個の販売 × 800円 = 月商 200万円
- 2年目以降: 前年比120%の成長を見込む。
(2) 経費の算出根拠 (単位:円)
項目 | 月額 | 算出根拠 |
---|---|---|
役員報酬 | 300,000 | 代表者1名 |
事務所家賃 | 150,000 | 池袋エリアの相場 |
水道光熱費 | 20,000 | |
通信費 | 15,000 | |
広告宣伝費 | 50,000 | Webサイト維持、販促資料作成費 |
旅費交通費 | 30,000 | 国内仕入先訪問等 |
その他諸経費 | 35,000 | 消耗品、雑費等 |
固定経費 合計 | 600,000 |
(3) 収支計画表(初年度・月別) (単位:千円)
項目 | 1-6月 (月平均) | 7-12月 (月平均) | 初年度合計 |
---|---|---|---|
売上高 | 1,600 | 2,000 | 21,600 |
売上原価 (62.5%) | 1,000 | 1,250 | 13,500 |
売上総利益 | 600 | 750 | 8,100 |
固定経費 | 600 | 600 | 7,200 |
営業利益 | 0 | 150 | 900 |
(4) 収支計画表(3カ年) (単位:千円)
項目 | 初年度 | 2年度 | 3年度 |
---|---|---|---|
売上高 | 21,600 | 25,920 | 31,104 |
売上原価 | 13,500 | 16,200 | 19,440 |
売上総利益 | 8,100 | 9,720 | 11,664 |
販管費 | 7,200 | 8,640 ※ | 8,880 |
営業利益 | 900 | 1,080 | 2,784 |
経常利益 | 900 | 1,080 | 2,784 |
税引後利益 | 630 | 756 | 1,948 |
※2年度より従業員1名の採用(給与・社会保険料等で年間144万円増)を想定
事業計画書のポイント
【ポイント解説】この事業計画書が「成功しそう」と評価される理由
この事業計画書が優れているのは、単に項目が埋められているからではありません。審査官が最も重視する**「事業の実現可能性」と「事業の継続性・安定性」**という2つの要素が、具体的な記述によって力強く証明されている点にあります。
一つずつ見ていきましょう。
ポイント1:事業の「実現可能性」を証明する工夫
「この事業は、本当に実現できるのか?絵に描いた餅ではないか?」という審査官の疑問に、以下の3つの点で明確に答えています。
①【最重要】経歴と事業内容の強力な一貫性
- サンプル該当箇所:
2. 申請者(経営者)の経歴
- ここが評価される!
- 「株式会社△△商事で8年間、日中貿易に従事」「新規サプライヤー開拓、中国代理店との交渉を担当」「3億円の取引実績」という具体的な職務経歴が書かれています。
- これにより、審査官は「この申請者は、貿易ビジネスのプロだ。だから、この事業を成功させる能力とノウハウを持っているだろう」と強く納得します。
- もし、申請者の経歴が「飲食店勤務」や「プログラマー」であった場合、「なぜ貿易を?」という大きな疑問が生じますが、このサンプルはその疑問を完璧に払拭しています。
② 具体的な取引先の明記で「空想ではない」ことを証明
- サンプル該当箇所:
4. (3) 仕入計画
,4. (4) 販売計画
,7. 取引予定先リスト
- ここが評価される!
- 仕入先として「〇〇製薬株式会社、ピジョン株式会社」、販売先として「上海宝宝商貿有限公司」という実在する企業名を挙げています。
- さらに、「商談済み」「基本合意書締結済み」という関係性の進捗状況を記述することで、事業が単なる思いつきではなく、現実に進んでいることを証明しています。
- 「日本の有名なメーカーから仕入れ、中国の大手ECサイトに販売する予定です」という曖昧な表現とは、信頼度が全く異なります。
③ 誰が読んでも分かる、明確なビジネスモデル
- サンプル該当箇所:
4. (2) ビジネスモデル(事業フロー)
- ここが評価される!
[日本のメーカー] → [当社] → [中国のECサイト] → [消費者]
というシンプルな図式で、お金の流れ(商流)が一目でわかります。- 「誰から商品を仕入れ(支出)、誰に商品を売ることで(収入)、利益を生むのか」という事業の根幹が明確です。これにより、審査官は事業内容をスムーズに理解できます。
ポイント2:事業の「継続性・安定性」をアピールする工夫
「仮に事業を始められたとして、それを継続し、日本で安定して生活していけるのか?」という審査官の懸念に対し、具体的な数字で安心感を与えています。
① 詳細で「現実的な」収支計画
- サンプル該当箇所:
9. 収支計画
- ここが評価される!
- 売上の根拠が明確: 「月商160万円」という数字だけでなく、「平均販売単価800円 × 月間2,000個の販売」という算出根拠が示されています。なぜこの売上が立つのか、審査官は具体的にイメージできます。
- 経費の計上が漏れなく現実的: 役員報酬(生活費の基盤)はもちろん、事務所家賃や広告宣伝費など、事業に必要な経費が現実的な金額で計上されています。経費の見積もりが甘いと、「この経営者は事業運営を分かっていない」と判断されかねません。
- 無理のない利益計画: 初年度から莫大な利益を上げる計画ではなく、最初は利益がゼロに近い状態からスタートし、徐々に黒字を拡大していく計画は非常に現実的です。これにより、事業を堅実に運営していく姿勢が伝わります。
② 十分な自己資金と、その明確な使途
- サンプル該当箇所:
1. 会社概要(資本金)
,8. 資金計画
- ここが評価される!
- ビザの要件である500万円を上回る「800万円」の資本金を用意することで、事業への本気度と、初期体力の余裕を示しています。
- その800万円の使い道を「事務所契約に100万円、備品に50万円、残りの650万円は当面の運転資金」と具体的に説明しています。これにより、計画的に事業を立ち上げ、軌道に乗るまで会社を維持していく資金計画があることを証明しています。
まとめ
この事業計画書が説得力を持つ理由は、「過去(経歴)」から「現在(具体的な取引先との関係)」、そして**「未来(詳細な収支計画)」**まで、全てのストーリーが一貫しており、具体的な事実と数字によって裏付けられているからです。
ご自身の事業計画書を作成する際は、このサンプルを参考に、「あなたの経歴」と「あなたの事業」をいかに強力に結びつけ、具体的なデータと数字でその計画を補強できるかを意識してみてください。